ホーム › 院長コラム › 逆流性食道炎 · 口臭
2026年9月21日

薬をやめると、また上がってくる胃酸

キム・ジフン
医療監修 キム・ジフン 代表院長

薬をやめると、なぜまた上がってくるのか。根拠を整理しました

30秒でわかるポイント

  1. 呑酸(すっぱいものが上がってくる感じ)や胸やけはよくある症状です。欧米の成人の最大30%が経験すると報告されています。
  2. 内視鏡がきれいでも、症状は実在します。 粘膜がただれるほどでなくても、逆流そのものと敏感になった食道の感覚が症状をつくります。
  3. 薬をやめるとまた上がってくるのには、リバウンドという仕組みがあります。逆流症状がまったくなかった健康な人120人に胃酸分泌抑制薬を8週間飲んでもらい、やめたところ、44%に呑酸・胸やけが現れました。 偽薬だけを飲んだ側は15%でした。
  4. ですから、薬を自己判断でやめないでください。 服用と減量は、処方した医療機関で決めることです。ただし「薬なしではだめな体」という結論は早すぎるかもしれません。
  5. 薬以外で数字として確認されているのは三つです。減量、遅い夕食を避けること、ベッドの頭側を高くすること。 鍼と六君子湯(りっくんしとう)は、薬でコントロールできない場合に試験されており、その成績を下にそのまま書きました。

よく伺うお悩み

  • 「薬を飲むと確かに平気なんです。でも、やめると1〜2週間でまた上がってきます。」
  • 「これって一生飲まないといけないんでしょうか。」
  • 「内視鏡はきれいだと言われました。なのに、どうしてなんでしょう。」
  • 「夜、横になるとすぐに上がってきます。」

逆流症状で来院される方のお話には、順番があります。薬がよく効くという話が先に出て、やめると戻ってくるという話が後に続きます。

どちらの疑問ももっともです。そしてどちらの疑問も、この病気の仕組みがわかれば、答えの方向が見えてきます。

前もってお伝えしておきます。この記事は、胃酸分泌抑制薬をやめなさいという記事ではありません。 むしろ、自己判断でやめてはいけない理由を数字でお見せする記事に近いものです。

初日はこのように進みます

  • 先に除外すべきものがないか。 飲み込みにくい、体重が減っている、黒い便が出るという場合は、内視鏡が先です。まず検査歴をお尋ねします。
  • 服用中の薬を確認します。 何をいつから飲んでいるかを見ます。やめてくださいとは申し上げません。
  • いつ上がってくるのかを分けます。 夜横になるとなのか、食後なのか、ストレスと一緒に上下するのか。ここで、今日から取り組むことが分かれます。

どれくらい多く、なぜ内視鏡はきれいなのか

胃食道逆流症は、胃の中のものが食道へ逆流して、呑酸や胸やけを起こす病気です。欧米の成人の最大30%が経験すると報告されるほど、よくある病気です。複数の国の調査を集めた分析では、国によって差が大きかったものの、50歳以上、喫煙、消炎鎮痛薬の服用、肥満は一貫して危険因子として確認されました。

ここで、多くの方が混乱するポイントが出てきます。症状ははっきりしているのに、内視鏡では食道粘膜の損傷が見られない場合がかなり多いということです。これを非びらん性逆流症と呼びます。

粘膜がただれるほどでなくても、逆流そのものと敏感になった食道の感覚が症状をつくりうるからです。機能性ディスペプシアで見たのと同じ構造です。検査が正常だというのは喜ばしい知らせであって、症状が偽物だという意味ではありません。

薬をやめると、なぜまた上がってくるのか

胃酸分泌抑制薬は、この病気の効果的な第一選択の治療です。まずこのことをはっきりさせておきます。

問題は、やめた後の再発が非常に多いということですが、これについて消化器学界を驚かせた実験があります。

デンマークの研究チームが、逆流症状がまったくない健康な成人120人を集めました。一方は12週間ずっと偽薬を、もう一方は胃酸分泌抑制薬を8週間飲んだ後に偽薬に切り替えました。患者も研究者も、誰が何を受けているかわからない設計でした。

結果ははっきりしていました。薬をやめた後の4週間で、もともと何の症状もなかった人の44%が、胸やけ・呑酸・消化不良を訴えました。 偽薬だけを飲んだ側は15%でした。

仕組みも合わせて示されました。胃酸が長く抑えられると、体は酸を出せという信号を補うように増やします。そして薬がなくなった瞬間、大きくなっていた分泌能力が一気に解き放たれるのです。

健康な人でさえこうなのですから、逆流症の方が薬をやめて経験する再発には、病気そのものの再発とこのリバウンドが混ざっている可能性があります。

同じことが睡眠でも起こります。体が薬に合わせて調整しておいたものが、薬が抜けた瞬間に表に出るという構造は同じです。

ここから導かれる結論は二つです。

第一に、薬を急に自己判断でやめるのは良い方法ではありません。 服用と中止、減量は、処方した医療機関と相談して決めることです。

第二に、「薬をやめると再発するから、自分は薬なしではだめな体だ」という結論は早すぎるかもしれません。 再発の一部は体の故障ではなく、予測できるリバウンドです。だとすれば、順番を設計する余地があるということです。

薬以外で、数字として確認されていること

生活習慣の改善。 よく「辛いものを控えてください」程度の助言として扱われますが、実際には測定された根拠のある項目があります。生活習慣への介入研究をまとめて検討した結果は次のとおりです。

減量は、二つのランダム化試験で食道が酸にさらされる時間を減らしました(それぞれ5.6%から3.7%へ、8.0%から5.5%へ)。遅い夕食は、早い夕食に比べて横になった姿勢での酸への曝露を5.2ポイント増やしました。ベッドの頭側を高くすることで、酸への曝露時間は21%から15%に減りました。標準体重の喫煙者の禁煙も、症状の軽減と関連していました。

結論ははっきりしています。肥満であれば減量、夜に症状があれば遅い食事を避けることとベッドの頭側を高くすることは、根拠のある処方です。お金のかからない治療が最も確かな根拠を持っている、ということがこの病気にもあるのです。

鍼治療。 標準用量の抑制薬でコントロールできない30人を対象にしたランダム化試験があります。薬の用量を2倍に上げた側は症状に意味のある変化がなかった一方、標準用量に鍼治療を加えた側(週2回、4週間)は、日中と夜間の胸やけと呑酸のスコアがはっきり減りました。用量の増量という標準的な対応と直接比べた設計である点が注目すべきところです。

六君子湯(りっくんしとう)。 抑制薬でコントロールできない非びらん性逆流症の患者242人を対象にした多施設共同試験があります。標準治療に六君子湯を加えた側と偽薬を加えた側を、8週間比較しました。

結果を正直に書きます。症状スコアという最も重要な指標では、両群に差はありませんでした。 ただし、生活の質のうち精神的健康のスコアは六君子湯の側でより改善し、その後の分析で高齢の患者の一部の症状改善が報告されました。

まとめると、「すべての患者で症状を確実に減らす」という根拠ではありません。「一部の患者群と一部の領域でシグナルがある」というのが、今の正確な位置づけです。

これらの根拠の限界

鍼の試験の規模。 30人の小規模なもので、偽の鍼ではなく薬の増量と比べた設計なので、鍼の効果と期待による効果を分けることはできません。4週間の短期の結果でもあります。

六君子湯の主要評価項目が未達。 最も重要な指標が基準に達しませんでした。精神的健康のスコアや一部の患者群の結果は副次的な分析という性格があり、確定的な根拠としては読めません。

リバウンド研究の対象。 この試験は健康な人を対象にしています。実際の患者でリバウンドがどの程度の比重を占めるのかは、別に見るべき問題です。患者の再発には、当然ながら病気そのものの再発も含まれます。

生活習慣改善研究の指標。 生活習慣への介入の根拠の多くは、症状ではなく、酸にさらされる時間という生理的な指標の改善です。酸への曝露が減ったからといって、症状がなくなる保証にはなりません。

規格製剤と個別処方の隔たり。 試験された六君子湯は規格化された製剤です。一人ひとりに合わせて加減した処方が同じ結果を出すとは言えません。

当院がはっきりさせていること

当院は薬と競い合うものではありません。胃酸分泌抑制薬は効果的な第一選択の治療であり、その薬を飲んでいる間に当院が担う役割は別にあります。薬が扱わない領域、つまり生活要因、胃腸の運動性、敏感になった感覚が当院の役割です。

そして、期待をふくらませることはしません。上に書いた成績が、当院からお伝えできるすべてです。

そこで当院は、次の基準で診ます

第一に、警告サインからふるい分けます。 飲み込みにくさや飲み込むときの痛み、意図しない体重減少、繰り返す嘔吐、黒い便や血便、貧血、中年以降に新たに始まった症状がある場合は、内視鏡が先です。検査を受けていない場合や、受けてからかなり時間がたっている場合も同じです。

第二に、服用中の薬を尊重します。 自己判断でやめさせることはしません。リバウンドの資料が示すとおり、急な中止は症状を悪化させることがあり、服用の調整は処方した医療機関の役割です。

第三に、症状の時間帯をお尋ねします。 夜横になると上がってくるのか、食後にひどいのか、ストレスと一緒に上下するのか。夜に上がってくるならベッドの頭側と夕食の時間という根拠のある処方があり、食後にひどいなら食べる速さと胃の運動性を、ストレスと絡んでいるならその軸を合わせて診ます。

第四に、体重と食事の時間を治療として扱います。 酸への曝露を数字で減らしたことが確認された介入は、薬以外ではこれらです。助言ではなく処方として位置づけ、実行できているかを再診で確認します。

第五に、韓医学的治療の役割を、根拠の大きさに見合った範囲で決めます。 標準治療でコントロールできない症状、特に内視鏡がきれいなタイプで鍼と韓方薬を併用することが、上の試験が扱ったところです。大きな効果を約束できる根拠はありません。

当院ではこのように進めます

除外と経過をまず確認します。 初診で警告サインと内視鏡の検査歴を確認し、検査が必要なのに受けていない場合は、内視鏡を受けられる医療機関をまずご案内します。胃酸分泌抑制薬をいつからどれくらい飲んでいるかを確認し、その薬の調整は処方した医療機関と相談していただくようご案内します。

タイプと体の状態を合わせて診ます。 症状の時間帯を分け、腹診でみぞおちやお腹の緊張と圧痛を、舌診・脈診で全身の状態を診ます。体組成検査・血液検査で体重と代謝の状態を確認し、減量が必要であれば目標を一緒に決めます。

生活習慣の改善を処方としてお出しします。 夕食から就寝までの間隔、ベッドの頭側を高くすること、減量の計画、禁煙のご案内を具体的な実行項目としてお渡しし、再診時に確認します。

韓医学的治療は役割を決めて併用します。 鍼・電気鍼でコントロールできない症状と胃腸の運動性を扱い、腹診と検査所見に応じて韓方薬を組み立てます。ストレスや睡眠と絡んでいれば、リズムの調整も一緒に行います。

期間を決めて見直します。 治療を始めるときに症状スコアを記録し、決めた時点で測り直して、反応がなければ同じ治療は繰り返さず、方向性を見直します。必要であれば、消化器内科の受診をおすすめします。

症状のタイプ、体重や喫煙といった併存要因、服用中の薬によって、治療への反応は人それぞれ異なります。当院が睡眠と消化をどのような順番で診ているかは、診療案内にまとめてあります。

こう変わります

夜、横になるときに身構えなくてもよくなること。これが一つ目の変化です。

その次はスコアです。治療前の症状スコアを記録してあるので、どれくらい減ったかを目で確認していただけます。「良くなっているような、いないような」で何か月も過ごす必要はありません。

こんな方は一度お越しください

  • 薬をやめると1〜2週間でまた上がってくる方
  • 内視鏡はきれいなのに、症状が変わらない方
  • 夜横になると上がってきて、眠れなくなる方
  • 何年も胃腸薬を飲み続けている方

服用中の薬は、そのまま持ってきてください。 やめてくださいとは申し上げません。いつ上がってくるのかを分けることから始め、今日から取り組むことを決めます。

この記事で参考にした資料

資料 どのような研究か 結果
Eusebi ほか, 2018 複数の国の人口調査を集めて分析 有病率は国によってばらつきが大きい。危険因子は50歳以上・喫煙・消炎鎮痛薬・肥満
Reimer ほか, 2009 逆流症状のない健康な成人120人、二重盲検 抑制薬を8週間飲んだ後にやめると44%に酸関連症状が出現(偽薬15%)― リバウンド性の酸過剰分泌
Ness-Jensen ほか, 2016 生活習慣への介入研究15本をまとめて検討 減量・遅い食事を避けること・ベッドの頭側を高くすることが酸への曝露を減らした(21%→15%など)
Dickman ほか, 2007 コントロールできない患者30人、薬の増量と直接比較 鍼の併用のほうが、抑制薬の増量より日中・夜間の胸やけの改善が良好
Tominaga ほか, 2014 コントロールできない非びらん性242人、多施設二重盲検 主要評価項目(症状スコア)は差なし。精神的健康スコアと高齢者の一部で改善

参考文献

  1. Eusebi LH, Ratnakumaran R, Yuan Y, Solaymani-Dodaran M, Bazzoli F, Ford AC. Global prevalence of, and risk factors for, gastro-oesophageal reflux symptoms: a meta-analysis. Gut. 2018;67(3):430-440. doi:10.1136/gutjnl-2016-313589

  2. Reimer C, Søndergaard B, Hilsted L, Bytzer P. Proton-pump inhibitor therapy induces acid-related symptoms in healthy volunteers after withdrawal of therapy. Gastroenterology. 2009;137(1):80-87. doi:10.1053/j.gastro.2009.03.058

  3. Ness-Jensen E, Hveem K, El-Serag H, Lagergren J. Lifestyle intervention in gastroesophageal reflux disease. Clinical Gastroenterology and Hepatology. 2016;14(2):175-182. doi:10.1016/j.cgh.2015.04.176

  4. Dickman R, Schiff E, Holland A, Wright C, Sarela SR, Han B, Fass R. Clinical trial: acupuncture vs. doubling the proton pump inhibitor dose in refractory heartburn. Alimentary Pharmacology & Therapeutics. 2007;26(10):1333-1344. doi:10.1111/j.1365-2036.2007.03520.x

  5. Tominaga K, Kato M, Takeda H, et al. A randomized, placebo-controlled, double-blind clinical trial of rikkunshito for patients with non-erosive reflux disease refractory to proton-pump inhibitor: the G-PRIDE study. Journal of Gastroenterology. 2014;49(10):1392-1405. doi:10.1007/s00535-013-0896-9


薬をやめるとまた上がってくる、ということを何度も繰り返している方は、一度お越しください。服用中の薬はそのままにして、その薬が扱わないところから診ていきます。

ご相談・ご予約はページ右下のメッセンジャーから日本語でどうぞ。お電話は +82-53-716-1175 です。

気になる症状はありませんか?

平日は夜8時半まで、土日・祝日も診療しています。

日本語でご相談いただけます

ページ右下のメッセンジャー(チャット)から日本語でどうぞ。スタッフが翻訳してお返事しますので、返信までお時間をいただく場合があります。

お電話:+82-53-716-1175(韓国国内からは 053-716-1175)

キム・ジフン

キム・ジフン 代表院長

検査では異常がないと言われたのに、不調が続いている方を診ています。お腹を押して診る腹診、舌を見る舌診、脈をとる脈診で体の状態を確かめ、確認したことを数字で記録して、次の診療のときに比べます。 痛みについては、痛む場所だけを見ることはしません。足の着地のしかたや顎のバランス、歩き方から原因を探します。治療の方針をご説明するときは、どの学術誌のどの研究なのかもあわせてお伝えします。ご自身で確かめられてこそ根拠だと考えています。

医師紹介をもっと見る →
/* v1.35.6 cache-bust 1775272025 */