五十肩は放っておけば治ると聞いたのですが
目次
「放っておけば治る」という言葉が、どこまで本当なのかを確かめました
30秒でわかるポイント
- 五十肩は時間がたてば自然にすっかり治るという言葉は、研究で確かめてみると10人中4人には当てはまりませんでした。
- 平均4年以上追った研究では41%に症状が残り、最初に痛みが強かった方ほど長引きました。
- だからといって、手術が答えでもありません。大規模な研究では、手術は注射と運動を組み合わせたリハビリより優れていませんでした。
- そのため、本当に五十肩なのかをまず確かめ、夜の痛みから抑え、固まった角度を段階的に広げていきます。
- 糖尿病があると長引くことがあるため、肩の治療と血糖管理を一緒に考える必要があります。
よく伺うお悩み
- 「腕が肩より上に上がりません。」
- 「夜、痛くて寝返りが打てないんです。」
- 「髪を洗うときと、後ろのポケットに手を入れるときがいちばんつらいです。」
- 「五十肩は放っておけば治ると聞いたんですが、本当ですか?」
- 「服を着ようとしたら腕が引っかかって、思わず声が出ました。」
夜、痛くて眠れない日が何か月も続いてから、ようやくいらっしゃる方が多くいます。
初日はこう進みます
- 本当に五十肩なのか。 腕がどこまで上がるか、外側にどれくらいひねれるかを測り、腱の断裂などほかの原因が疑われれば、同じビル2階の画像診断科と連携して確認します。
- 今どの段階なのか。 痛む時期なのか、固まる時期なのかによって、やるべきことがまったく変わります。
- 何から取り組むか。 当院がいちばん最初に目指すのは、夜に寝返りが打てるようになることです。眠れてこそ回復が始まるからです。その次が、髪を洗うこと、服を着ることです。
五十肩は本当に自然に治るのですか
「五十肩は放っておいても1〜2年で自然にほぐれると聞いたんですが」。肩が固まっていらっしゃる方が、いちばんよくおっしゃる言葉です。
この言葉には由来があります。1940年代に「五十肩は、痛む時期、固まる時期、ほぐれる時期を経て自然に治る病気」という説明が出され、その後80年近く、教科書のように受け継がれてきました。
問題は、この説明が実際に確かめられたことがあるのかという点です。確かめた研究は、この言葉を裏づけませんでした。
研究で確かめてみると、どうだったのですか
自然にすっかり治るという根拠は見つかりませんでした。 治療を受けていない人を含む研究を集めて分析した結果です。むしろ、複数の試験の長期データは「ほぐれる時期が来る」という説明と合いませんでした。肩が動く範囲は良くなったものの、正常にまでは戻りませんでした。
長く追ったデータも同じ方向を示しています。五十肩を患った223人を平均4.4年追跡した研究では、59%は正常またはそれに近い状態でしたが、41%には症状が残っていました。 残った症状のほとんどは軽いものでしたが、6%は痛みと機能の低下が続いていました。そして、最初に痛みが強かった方ほど、その後の経過が良くありませんでした。
もう一つあります。「自然に治る」という理論を最初に示した1975年の論文でさえ、完全に治った人は39%でした。この言葉の出発点となった研究からして、この言葉を十分には裏づけていなかったことになります。
五十肩は、時間とともにおおむね良くなる方向に向かいます。しかし、「自然に完全に治る」という言葉は、10人中4人には当てはまりませんでした。
では、手術をすべきですか
それも違います。 英国の35の病院で、五十肩の患者を三つのグループに分けて比べた大規模な試験があります。麻酔をして肩を強制的に動かす方法、内視鏡手術、そして注射とともに早くから始める集中的なリハビリです。
1年後の結果では、三つのうちどれも優れてはいませんでした。 むしろ内視鏡手術は、合併症のリスクと費用が大きいものでした。
より強く手を加える治療が、より良い結果を保証するわけではありません。 保存的な治療をしっかり行うことが先だという根拠です。
鍼治療についての根拠もあります。複数の試験を集めた分析では、鍼治療を受けた側のほうが、理学療法や体外衝撃波を受けた側より痛みがより減りました。 鍼刀(しんとう)治療を別に見た分析でも、患者501人で痛みと肩の機能が改善し、副作用はほかの治療と差がありませんでした。
当院がはっきりさせておくこと
五十肩が自然に治るかを長く追った研究は、思っているより少ないのが実情です。「自然に治るという根拠は確かではない」ということであって、「絶対に治らない」という意味ではありません。
不確かなところほど、当院では角度を測ってから始めます。 待つか、手を打つかを、感覚ではなく数字で決められるからです。
そこで当院は、こうした基準で診ます
一つ目に、待てば治るということを前提にしません。10人中4人は数年後も症状が残り、最初に痛みが強いほど経過が良くないというデータがあります。今とても痛い方に、ただ様子を見ましょうと言うのは根拠に合いません。
二つ目に、本当に五十肩なのかから診ます。肩が固まる症状は、腱が切れたときにも、石灰がたまったときにも、関節炎のときにも現れます。自分で腕を上げるときだけ上がらないのか、人に持ち上げてもらっても上がらないのかが分かれ目です。
三つ目に、治療は弱いものから順番に上げていきます。手術のほうが優れているという根拠がないので、鍼・薬鍼(やくしん)・手技と運動をしっかり行うことが先です。それでも長く反応がなければ、そのときに次の段階をご相談します。
四つ目に、糖尿病があるかどうかは必ず伺います。糖尿病があると経過が長く頑固になるため、血糖の状態も一緒に見てこそ、治療計画が現実的になります。
五つ目に、目標は「痛くなくすること」ではなく、角度と睡眠です。夜に痛くて眠れないことがこの病気のいちばん大きな苦しみで、腕が上がる角度が回復を測る実際の目盛りだからです。
当院の進め方
初診で、腕がどこまで上がるか、外側にどれくらいひねれるかを測ります。腱の断裂などほかの原因が疑われれば、同じビル2階の画像診断科と連携して超音波・MRIで確認してから方向を決めます。名前をつける前に、それで合っているかを確かめるのが順番です。
次は、段階に合わせます。痛む時期には、鍼・薬鍼で夜の痛みから抑えます。眠れてこそ回復が始まるからです。固まる時期に移ったら、推拿(チュナ)治療と段階的な関節運動で範囲を広げていきます。癒着がひどければ鍼刀治療を行い、必要に応じて血液検査と体成分検査(InBody検査)を見て韓方薬も併用します。2024年1月から2026年7月までの累計来院20,374人を診るなかで、夜の痛みが先に抑えられてこそ運動療法が進む、という順番を繰り返し確かめてきました。
角度は治療前に測っておき、測り直すたびに比べます。良くなった感じではなく、広がった角度で判断します。糖尿病がある方には、血糖の状態に応じて見込まれる経過を変えてご案内し、管理ができていなければ内科の受診もあわせておすすめします。
一定期間治療しても角度が広がらなければ、同じ治療を繰り返すことはしません。改めて評価し、必要であれば連携先やほかの医療機関をご案内します。
良くなるスピードと最終的な角度は、最初の状態、患ってきた期間、糖尿病などほかの病気によって人それぞれです。
今確かめておかないと
「待てば治る」という言葉を信じて過ごすあいだに、二つのことが進みます。
肩は固まり続けます。痛くて使わず、使わないからさらに固まり、固まるからさらに痛くなります。この悪循環の中では、時間は味方ではありません。
そして、先ほどの数字があります。10人中4人は数年後も症状が残り、最初に痛みが強かった方ほど長引きました。 今とても痛いのであれば、ただ様子を見ることは根拠に合いません。
夜に眠れない状態が長引くと、肩より先に日常生活全体が崩れてしまいます。
こう変わります
最初の目標は、夜に寝返りが打てるようになることです。眠れてこそ回復が始まるので、当院はここから取り組みます。
その次が角度です。髪を洗うときに腕が上がること、後ろのポケットに手が届くこと、服の着脱でためらわないこと。こうした動作の一つひとつが、角度として測られます。数字で測っておくので、どれくらい戻ってきたかを目で確かめていただけます。
こんな方は、一度いらしてください
- 腕が肩より上に上がらない方
- 夜、痛くてよく眠れない方
- 髪を洗う、服を着るのがつらくなった方
- 「放っておけば治る」と聞いて先延ばしにしている方
夜に眠れないことから扱います。 眠れてこそ回復が始まるからです。いらしたらその日に角度を測り、今どの段階なのかを聞いてお帰りいただけます。
この記事が参考にした資料
| 資料 | どんな研究か | 結果 |
|---|---|---|
| Wong ほか, 2017 | 治療を受けていない人を含む研究を集めて分析 | 自然に治るという根拠なし。動きは良くなるが正常には届かない |
| Hand ほか, 2008 | 五十肩の患者223人を平均4.4年追跡 | 59%が正常・ほぼ正常、41%に症状が残存。初期に重いほど予後が悪い |
| Reeves, 1975 | 「自然に治る」理論を最初に示した論文 | その論文でも完全回復は39% |
| Rangan ほか, 2020 | 英国35病院、三つの治療を比較 | 1年後に優劣なし。内視鏡手術は合併症・費用がより大きい |
| Ben-Arie ほか, 2020 | 五十肩の鍼治療の試験を集めて分析 | 理学療法などと比べ、痛みがより減少 |
| You ほか, 2019 | 鍼刀治療の試験8本・501人 | 痛み・肩の機能が改善、副作用は差なし |
参考文献
Wong CK, Levine WN, Deo K, Kesting RS, Mercer EA, Schram GA, Strang BL. Natural history of frozen shoulder: fact or fiction? A systematic review. Physiotherapy. 2017;103(1):40-47. doi:10.1016/j.physio.2016.05.009
Hand C, Clipsham K, Rees JL, Carr AJ. Long-term outcome of frozen shoulder. Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 2008;17(2):231-236. doi:10.1016/j.jse.2007.05.009. PMID: 17993282
Reeves B. The natural history of the frozen shoulder syndrome. Scandinavian Journal of Rheumatology. 1975;4(4):193-196. doi:10.3109/03009747509165255
Rangan A, Brealey SD, Keding A, et al. Management of adults with primary frozen shoulder in secondary care (UK FROST): a multicentre, pragmatic, three-arm, superiority randomised clinical trial. Lancet. 2020;396(10256):977-989. doi:10.1016/S0140-6736(20)31965-6
Ben-Arie E, Kao PY, Lee YC, Ho WC, Chou LW, Liu HP. The effectiveness of acupuncture in the treatment of frozen shoulder: a systematic review and meta-analysis. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2020;2020:9790470. doi:10.1155/2020/9790470
You J, Yang F, Liu N, Tang N, Fang T, Liu F, Liu Z, Xie H. Acupotomy therapy for shoulder adhesive capsulitis: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2019;2019:2010816. doi:10.1155/2019/2010816
腕が上がらなくなって何か月もたつなら、一度いらしてください。今どの時期なのかを見極めることで、やるべきことが変わります。
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