朝ぼんやりするのは、「昨夜眠れなかった」証拠ではありません
目次
アラームを止めて20分、ぼんやり座ったまま「また眠れなかった」と思ったなら
30秒でわかるポイント
- 目が覚めてから頭がはっきりするまでの移行期を睡眠慣性と呼びます。よく眠った人でも30分〜1時間はぼんやりします。
- 朝の感覚で昨夜の睡眠を採点すると、不安が大きくなって次の夜がさらに悪くなります。 だから、このことを知ること自体が治療の一段階です。
- とくにぼんやりする日は、深い眠りの段階でアラームが鳴ったのかもしれません。アラームを30分早めたり遅らせたりする実験をしてみてください。
- 「90分の倍数で眠りなさい」という計算は、あてになりません。計算ではなく実験をして、見つかったら毎日同じ時刻に固定します。
- 何か月も午後までぼんやりして明け方にようやく眠れる、日中ひどく眠くていびきをかくという場合は、ほかの確認が先です。
よく伺うお悩み
- 「毎朝、頭に霧がかかったようなんです。」
- 「起きるとぼんやりしていて、やっぱり眠れなかったんだと思います。」
- 「アラームを止めてまた横になって、もっとつらい思いで起きます。」
- 「何時に起きればすっきりするか教えてくれるアプリを使ってみたけど、よくわかりません。」
アラームを止めて、ベッドに腰かけたまま20分がたちました。
頭には霧がかかったようで、体は鉛のように重く、今日やることが一つも浮かんできません。その霧の中で、一つの結論を出します。やっぱり昨夜はちゃんと眠れなかったんだ。
その結論は一日中ついて回り、その夜、布団の中で不安に変わります。今夜こそ、ちゃんと眠らなきゃ。
その結論を、もう一度見直していただきたいのです。朝ぼんやりするのは、昨夜の睡眠の成績表ではないかもしれません。
朝ぼんやりするのは、眠れなかったからですか?
必ずしもそうではありません。目が覚めるには、もともと時間がかかります。誰でもそうです。
不眠症治療の専門書では、目が覚めてから完全に頭がはっきりするまでの移行期を睡眠慣性と呼んでいます。眠りが終わっても脳はすぐにはオンにならず、眠りの状態が慣性のようにしばらく続くのです。
- この移行期は、ふつうの人でも30分から1時間ほどあります。よく眠った人でも、起きてすぐはぼんやりします。
- 夜遅くに頭がさえる夜型の人はこの慣性がずっと長く、午前中ずっとぼんやりしていて、午後になってようやくはっきりすることもあります。
専門書が強調している点があります。朝の感覚で昨夜の睡眠を採点すると、睡眠への不安が大きくなり、次の夜がさらに悪くなるということです。
ぼんやりした朝 →「眠れなかったんだ」→ 夜の不安 → 本当に眠れない夜 → さらにぼんやりした朝。
この悪循環を断ち切る第一歩は、朝ぼんやりするのはもともとそういうものだと知ることです。そのため専門書では、睡眠慣性についての説明そのものを、治療の一段階に組み込んでいます。
それでも、とくにぼんやりする日があるのはなぜですか?
眠りは一つのかたまりではありません。浅い眠りから深い眠りへ下りていき、夢を見る眠り(レム睡眠)へまた上がってくる周期が70〜90分ごとに繰り返され、一晩に4〜5回巡ります。深い眠りは主に夜の前半に集まり、後半になるほど夢を見る眠りが長くなります。アラームなしで自然に目が覚めるときは、たいてい夢を見る浅い段階で目覚めます。
問題はアラームです。アラームは、眠りの段階を知らずに鳴ります。よりによって深い眠りのときに鳴ると、深い水の中から急に引き上げられたように、とくにぼんやりして重く感じます。
そこで診察室では、こうお伝えしています。十分に眠ったのにとくにぼんやりするなら、起きる時間を30分早めるか、30分遅らせてみてください。 寝る時間はそのままにしてアラームだけをずらし、深い段階を避けて、浅い段階でアラームが鳴る時刻を探してみるのです。
何時に起きればいちばんすっきりするか、計算できますか?
正直に申し上げると、難しいです。周期の長さは人によって、年齢によって、その日その日で違います。そのため、何時何分に起きればいちばん良いと計算してくれるアプリや、90分の倍数で眠ればいいという話は、あてにはなりません。
できるのは実験です。
- 1週間は、アラームを30分早くセットします。
- 次の1週間は、30分遅くセットします。
- どちらがぼんやりしにくいかを比べ、見つかったら、その時刻に毎日固定します。
起きる時間がばらばらなことが、睡眠慣性をいちばん大きくします。
何が、ぼんやりした朝をさらに長くするのですか?
- 睡眠不足の日が積み重なったとき
- 昼寝を長くした日。 体内時計の専門書は、昼寝は20分を超えないようすすめています。それより長いと深い眠りに入り、目覚めたあとしばらく夢うつつになります。
- 週末に、いつもより2〜3時間遅く起きた日
- 体内時計が後ろにずれて、体はまだ夜なのに無理に起きる朝
こうした日のぼんやりは、眠れなかったからではなく、目覚める条件が悪いからです。
ぼんやりした朝を短く切り上げるには、どうすればいいですか?
一つ目に、アラームを止めてまた横にならないでください。 もう一度眠ると新しい周期が始まり、次のアラームはさらに深いところで鳴ります。
二つ目に、起きたらすぐに光を浴びてください。 カーテンを開けるか、外に出てください。朝の光は、脳に「もう起きている時間だ」という合図をいちばん強く送ります。詳しい方法は朝の日差しから変えてみてくださいに書きました。
三つ目に、水を一杯飲んで、体を動かしてください。
四つ目に、大事な決断や運転は、起きてから30分ほどあとに回してください。 怠けているのではなく、脳がオンになる時間を尊重しているのです。
こんな場合は、睡眠慣性だけの問題ではないかもしれません
- 毎日午後までぼんやりして、明け方にならないと眠れないパターンが何か月も続いているなら、体内時計が大きく後ろにずれた状態(睡眠相後退)のことがあります。光と時間割で時計を前に戻す治療が必要です。
- 日中もひどく眠く、いびきがひどい、呼吸が止まっているようだと言われるなら、睡眠時無呼吸の検査が先です。
- 朝の重さとともに、2週間以上気分が沈んでいるなら、心の面の診療もあわせておすすめします。
当院の進め方
一つ目に、ぼんやりがどこから来ているのかを見ます。 1〜2週間の睡眠日誌に、眠った時刻・起きた時刻とあわせてぼんやりが晴れる時刻を書いてきていただくと、ふつうの睡眠慣性なのか、時計がずれているのか、睡眠そのものが足りないのかが見えてきます。血液検査と腹診・脈診で、疲れと覚醒にかかわる体の状態もあわせて診ます。
二つ目に、目覚める条件を変え、体を助けます。 起床時間の固定、アラーム時間の実験、朝の光、昼寝の長さで、一日の時間割を一緒に組みます。鍼(はり)・薬鍼(やくしん)と、検査に合わせた韓方薬で、日中の疲れと夜の覚醒を調整します。時計がずれているタイプであれば、光の時間割で時計を前に戻す計画を立てます。
三つ目に、朝で確かめます。 何時間眠ったかよりも、ぼんやりが晴れるまでにかかる時間が短くなっているかを、日誌で一緒に見ます。根拠のない治療はいたしません。
こう変わります
アラームを止めて「今日も眠れなかった」の代わりに、「この時間はもともとこうだから」とカーテンを開ける朝。30分後にははっきりするとわかっているから、夜に不安にならない布団の中。
当院が目指しているのは、それです。
ぼんやりの長さと原因は、体内時計のタイプ、睡眠の状態、生活の事情によって人それぞれです。
今日のまとめ
朝ぼんやりするのは誰にでもある移行期で、昨夜の睡眠の成績表として見るものではありません。 とくにぼんやりするなら、アラームを30分ずらしてみる実験から始めてみてください。
今日からやっていただきたいことは一つです。1週間、アラームの時刻、実際に起きた時刻、頭がはっきりしたと感じた時刻を、一行ずつ書いてみてください。次の週はアラームを30分ずらして、同じ記録をつけてみてください。2週間分の記録を並べてみると、自分の朝のぼんやりが睡眠不足のせいなのか、起きる時間が合っていないせいなのかが見え始めます。その記録を持っていらしてくだされば、あとは一緒に見ていきます。平日は夜8時半まで、土日・祝日も診療しています。
不眠症治療の根拠は、院長コラム途中で目が覚めるのも不眠症ですにまとめてあります。
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