椎間板ヘルニアは、横になってしっかり休めば早く治りますか
目次
「とにかく横になって休んで」と言われて何日も寝て過ごしたのに、かえって体がこわばってしまったなら
30秒でわかるポイント
- 臨床試験10件・1,923人をまとめた分析では、脚に広がる椎間板ヘルニアの痛みがある患者で、安静に寝ていたグループと普段どおり活動したグループの痛み・機能に差はありませんでした。 寝て過ごしても早くは治りませんでした。
- 長く寝て過ごすと、腰を支える筋肉が弱り、体がこわばり、動くことが怖くなります。
- 夜にしっかり眠ることは回復の一部です。問題は、昼間まで横になっていることが一日のすべてになってしまうことです。
- 痛みがひどい最初の1〜2日が過ぎたら、まず歩くことを取り戻し、痛む動作だけを避け、痛みを目安に量を調整してください。
- 排尿・排便の障害、サドルが当たる部分の感覚の鈍り、だんだん強くなる足の脱力は、すぐに手術の要否の評価が必要です。
よく伺うお悩み
- 「動くとヘルニアがひどくなると言われて、ずっと横になっていました。」
- 「1週間休んだのに脚はそのままで、腰はかえってこわばっています。」
- 「今では起き上がること自体が怖いです。」
- 「休むのが正しいのか、怖がりすぎなのか、わかりません。」
椎間板ヘルニアと診断されると、周りから必ずこう言われます。
「とにかく横になって休んで。動いたらもっと飛び出すよ。」
それで何日も横になって過ごしました。トイレのときだけ起きて、食事も横になったまま。ところが1週間たっても脚は相変わらず引きつれ、腰はかえってこわばり、今では起き上がること自体が怖くなっています。
今日はこの疑問に研究でお答えします。先に結論をお伝えすると、寝て過ごすことで椎間板ヘルニアが早く治るという根拠はなく、長く寝て過ごすとかえって害になることがあります。
夜に横になるのも避けるべきですか?
いいえ。夜に横になることと、一日中横になっていることは別の話です。
前回のコラムで、横になると椎間板にかかる圧力は立っているときの5分の1に減るとお伝えしました。眠っている間に椎間板が休み、水分を含むのは回復の一部です。だから、しっかり眠ることは大切です。
ただ、それは昼間もずっと横になっていたほうがよいという意味ではありません。体には椎間板のほかにも、腰を支える筋肉や関節、そして心があるからです。
安静に寝ていると、本当に早く治るのですか?
これを比べた研究があります。
腰痛、そして脚に広がる痛み(椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛)のある患者を2種類のアドバイスに分けた臨床試験10件、1,923人をまとめた国際的なレビューです。一方は「横になって休んでください」、もう一方は「痛みが許す範囲で普段どおり活動してください」というアドバイスを受けました。
- 脚に広がる痛みがある患者: 安静に寝ていたグループと活動を続けたグループの間で、痛みと機能に差はありませんでした。寝て休んでも早くは治らなかったということです。
- 脚の痛みがなく腰だけが痛む患者: 活動を続けたグループのほうが、痛みと機能が少しよい結果でした。
研究チームの結論はこうでした。寝て過ごすと筋肉が弱り体の機能が落ちるといった害がありうる一方で、利点は確認されなかった。だから、脚の痛みがある患者にも活動を続けるようアドバイスするのが合理的だ、と。20世紀を通じて標準だった「数日間の安静」という処方は、こうして変わりました。
なぜ寝て過ごすと悪くなることがあるのですか?
- 筋肉が弱ります。 横になっている間、腰を支えるお腹とお尻の筋肉は使われません。数日で力が落ち始め、起き上がったときに腰を支える力が足りず、さらに痛みます。
- 体がこわばります。 血の巡りが遅くなり、こわばった体は小さな動きでも痛みを強く感じます。
- 怖さが育ちます。 いちばん大きな問題は心です。寝て過ごす日が長くなるほど「動いたら大変なことになる」という怖さが大きくなり、その怖さが回復した後も体をすくませます。
では、どう過ごせばよいのですか?
原則は一つです。痛む動作は避けて、それ以外は普段どおりに。
痛みが激しい最初の1〜2日は、横になって休んでもかまいません。その程度の休養は必要なこともあります。その後からは、方向を変えてください。
第一に、まず歩くことを取り戻してください。 平らな道を短く、1日に何回か。10分を3回のほうが、30分を1回より楽です。脚の痛みが強くなる前に止まり、休んでからまた歩く、というやり方で(しびれるまで歩かないでください)。
第二に、痛む動作だけを避け、姿勢はこまめに変えてください。 椎間板ヘルニアの痛みを強める動作は決まっています。腰を丸めて前かがみになる、重いものを持ち上げる、長く座り続ける。これらは避けるか、やり方を変えてください。かがみ方は腰をかがめるときは、腰ではなく股関節から折りましょうにまとめてあります。それ以外の日常(家事、軽い外出、通勤)は、痛みが許す範囲で続けてください。どんな姿勢をとるかより、同じ姿勢を長く続けないことのほうが大切です。
第三に、痛みを目安に量を調整してください。 活動中の軽い痛みや、終わってから1〜2時間で治まる程度なら大丈夫です。活動した翌日まで脚の痛みが目立って強くなっているなら、量が多すぎたサインなので一段階減らしてください。痛みがゼロになるまで待っていてはいつまでも動けませんし、痛みを無視して押し切るとまたぶり返します。
第四に、休むときは姿勢を選んで休んでください。 脚の痛みが強くなって少し横になるなら、横向きに寝てひざの間に枕を、または仰向けに寝てひざの下に枕を置いてください。少し休むのはかまいません。その休みが一日のすべてにならないようにすることがポイントです。
こんなサインは、すぐに確認が先です
- 排尿や排便がしにくい、またはがまんしにくくなった
- お尻・足の付け根・太ももの内側(自転車のサドルが当たる部分)の感覚が鈍くなった
- 足首や足の指の力が抜ける感じが、だんだん強くなっている
この場合は、活動か休養かを考える段階を過ぎています。手術の要否の評価が必要な状況です。当院にいらしても同じことをお伝えし、すぐにご案内します。
当院の進め方
「活動を続けてください」というアドバイスは、痛みが強すぎると守れません。そこで当院が担うのは、そのアドバイスを守れる体をつくることです。
第一に、確認します。 危険なサインと脚の力・感覚を診察し、必要に応じて同じビル2階の画像診断科と連携して椎間板の状態を確認します。今どんな動作が痛み、どんな活動ならできるのかも詳しく伺います。
第二に、痛みを下げて動けるようにします。 鍼(はり)・薬鍼(やくしん)で脚の痛みと腰の緊張を調整し、神経の状態を確認した範囲で推拿(チュナ)治療によりこわばった動きに対処します。椎間板ヘルニアで長く脚の痛みが続いていた患者を本物の鍼と偽の鍼で比べた最近の研究では、本物の鍼のほうが脚の痛みをより減らし、その差は1年間続きました。1つの国で慢性の患者だけを対象にした研究だという限界もあわせてお伝えします。そして、歩くことから始める活動計画を、痛みの程度に合わせて、避ける動作と続ける活動に分けて一緒に決めます。
第三に、記録で確認します。 休まずに歩ける時間、脚の痛みの点数、しびれの範囲を、決めた時期ごとに比べます。よくなる経過をたどっていなければ、同じ治療を繰り返さず、次の道をご案内します。根拠のない治療はいたしません。
こう変わります
横になって天井ばかり見ていた1週間の代わりに、毎朝近所をひと回り歩く1週間。体が椎間板を整えていく間に、筋肉と心が一緒に弱ってしまわないこと。
当院が目指しているのは、そこです。
活動できる範囲と回復の速さは、椎間板の状態や痛みの程度、生活の事情によって、人それぞれ異なります。
今日のまとめ
椎間板ヘルニアは、寝て過ごしても早くは治りません。 激しい1〜2日が過ぎたら、痛む動作だけを避け、歩くことから普段の生活を取り戻してください。
今日やっていただきたいことは一つです。今、横になって過ごしているなら、今日は家の中を10分だけ歩いてみてください。そして1週間、1日に何分歩いたか、どんな動作で痛んだかを1行ずつ書いてみてください。その記録をお持ちいただければ、避けることと続けることを一緒に整理しましょう。平日は夜8時半まで、土日・祝日も診療しています。
飛び出した椎間板が自然に小さくなる過程とその根拠は、院長コラム飛び出した椎間板は自然に小さくなることもありますにまとめてあります。
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参考文献
Dahm KT, Brurberg KG, Jamtvedt G, Hagen KB. Advice to rest in bed versus advice to stay active for acute low-back pain and sciatica. Cochrane Database Syst Rev. 2010;(6):CD007612. doi:10.1002/14651858.CD007612.pub2. PMID: 20556780
Tu JF, Shi GX, Yan SY, et al. Acupuncture vs sham acupuncture for chronic sciatica from herniated disk: a randomized clinical trial. JAMA Intern Med. 2024;184(12):1417-1424. doi:10.1001/jamainternmed.2024.5463
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