腰椎椎間板ヘルニア、どう寝て、どう起き上がればよいのでしょうか
目次
かたい床で寝てみたけれど、明け方になるたびに腰が痛くて目が覚めるなら
30秒でわかるポイント
- あお向けに寝ると、椎間板にかかる圧力は立っているときの約5分の1です。夜は、椎間板が休んで水分を再び蓄える回復の時間です。
- 「腰が痛いならかたいところで寝なさい」という話は根拠が弱いのです。313人の研究では、中程度のかたさのマットレスのほうが、良くなる可能性が約2倍でした。
- 横向きに寝るときは膝の間に、あお向けのときは膝の下に枕を置きます。
- 寝返りを打つときは、肩と骨盤を丸太のようにひとかたまりで回します。
- 朝は勢いよく起き上がらず、横向きになる → 脚を下ろしながら腕で押して座る → しばらく座る → 脚の力で立ち上がります。
よく伺うお悩み
- 「腰が痛いときは、かたいところで寝たほうがいいと聞いたんですが。」
- 「寝返りを打とうとすると脚にビリッときて、息を止めてしまいます。」
- 「朝、起き上がるだけでずいぶん時間がかかります。」
- 「どんな姿勢で寝ればいいのかわかりません。」
椎間板ヘルニアと診断されると、必ずと言っていいほど聞くアドバイスがあります。腰が痛いならかたいところで寝なさい、という話です。
そこで、ベッドをやめて床に敷き布団を敷いて寝てみました。ところが明け方になるたびに腰が痛くて目が覚め、寝返りを打とうとすると脚にビリッときて息を止め、朝起き上がるにはずいぶん長くうなってしまいます。自分の寝方が間違っているのか、それともあのアドバイスが間違っているのか。
椎間板ヘルニアがあるときに、何の上で、どんな姿勢で寝て、どう寝返りを打ち、どう起き上がればよいのかを、根拠のあるものを中心に書きました。
夜の椎間板は、どんな状態なのですか?
良い知らせからお伝えします。夜は、椎間板が休む時間です。
椎間板の中の圧力を直接測った研究では、あお向けに寝たときの圧力は、立っているときの約5分の1でした。一日のうちで椎間板が最も楽なのは、眠っている時間です。
その間に椎間板は、日中に押しつぶされて抜け出ていた水分を再び吸い込んでふくらみます。ですから、よく眠ること自体が椎間板の治療の一部であり、痛みで眠りが細切れになると、回復も細切れになってしまいます。
かたいところで寝たほうが、腰に良いのですか?
根拠は弱いのです。
長く続く腰の痛みのある患者313人のマットレスを新しいものに取り替え、一方はかたいもの、もう一方は中程度のかたさのものにして、3か月間比べた研究があります。
- どちらも、新しいマットレスで良くなりました。
- しかし、中程度のかたさの側のほうが、ベッドの上での痛みと日常の不便さが減る可能性が約2倍高くなりました。
研究チームは、かたいマットレスが腰に良いという思い込みは、根拠なく広まったものだとまとめています。
正直に付け加えると、この研究は脚に放散する痛みのない腰痛の患者が対象でした。脚が引っ張られるように痛む椎間板ヘルニアの患者に、そのまま当てはめることはできません。ただ、かたいほど良いという話を信じて、床で体が痛む夜を我慢する理由はありません。
目安は、体が楽に感じる中程度のかたさ、そして横になったときにお尻が深く沈み込まない状態です。真ん中がくぼんだ古いマットレスなら、そのくぼみが一晩中腰を折り曲げているようなものなので、替えどきのサインです。
どんな姿勢で寝ればよいのですか?
三つだけ覚えてください。
一つ目、横向きに寝るときは膝の間に枕を。 横向きになると上側の脚が前に落ちて骨盤がねじれ、そのねじれが腰まで伝わります。膝の間に枕やクッションを挟むと、骨盤が水平に保たれて腰がねじれません。椎間板ヘルニアのある方に、まずおすすめする姿勢です。
二つ目、あお向けに寝るときは膝の下に枕を。 同じ圧力の研究で測った姿勢のうち、最も低い値だったのは、あお向けで膝を軽く曲げた姿勢でした。膝の下を支えると、腰が床から浮かずに楽な状態で置かれます。
三つ目、うつ伏せ寝は、つらければ避けてください。 うつ伏せになると、首を片側に回さなければならず、腰が反ります。平気な方もいますが、椎間板ヘルニアの痛みがある間、朝にいっそうこわばるようなら、その姿勢が合っていないというサインです。
寝返りでビリッとくるときは、どうすればよいですか?
肩だけを先に回したり、腰をひねりながら回ったりすると、椎間板がねじれます。
肩と骨盤をひとかたまりにして、丸太が転がるように一緒に回してください。膝を軽く曲げ、両手を胸の前で合わせ、肩・腰・骨盤を一度に回します。最初は意識する必要がありますが、数日もすれば体が覚えます。
朝は、どう起き上がればよいですか?
椎間板は一晩中水分を蓄えるため、朝に最もふくらんでいます。このときに勢いよく起き上がって腰を丸めると、一日のうちで最も弱い瞬間に最も大きな圧力をかけることになります。ですから、順番があります。
- まず、丸太のように横向きになります。
- ベッドの外へ両脚を下ろしながら、腕でベッドを押して上半身を起こします。脚が下りる重さが上半身を起こす力になるように、シーソーのような要領です。
- ベッドの端にしばらく座ります。すぐに立ち上がらないでください。
- 立ち上がるときは、お尻を後ろに引いて折りたたみ、脚の力で立ちます。
4番は、腰をかがめるときは、腰ではなくお尻を折りたたむに書いた動作です。
床で寝ている場合は、この過程がずっと大変になります。床から起き上がるには、腰を深くかがめてひねるしかないため、椎間板ヘルニアの痛みがある間は、ベッドや高さのあるマットレスのほうが有利です。
夜、痛みで目が覚めるなら
寝ている間に脚が引っ張られるように痛んで目が覚める日は、我慢するより姿勢を変えてください。横向きになって膝の間に枕を挟むか、あお向けになって膝の下を支えます。何時に、どんな姿勢で目が覚めたかを簡単にメモしておくと、診療にとても役立ちます。
次のような場合は、姿勢で解決することではありません。
- 姿勢を変えても毎晩だんだんひどくなる痛みが続き、熱が出たり、理由もなく体重が減ったりする場合は、別の原因を確認する必要があるので、受診を先延ばしにしないでください。
- 排尿・排便の様子が変わった、お尻や股の感覚が鈍くなった、足の力がだんだん抜けていくという場合は、すぐに手術の評価が必要です。当院にいらしても、同じことをお伝えします。
当院の進め方
一つ目、夜の様子を診ます。 どんな姿勢で目が覚めるのか、朝起き上がるのにどれくらいかかるのか、何の上で寝ているのかをお尋ねし、脚の力・感覚と危険なサインを診察します。必要に応じて、同じビル2階の画像診断科と連携して椎間板の状態を確認します。
二つ目、夜を守ります。 鍼・薬鍼で夜に目を覚まさせる脚の痛みと腰の緊張を調整し、推拿(チュナ)治療でこわばった骨盤の動きを整えます。寝る姿勢、寝返り、起き上がり方は、診察室で実際にやっていただきながら直していきます。痛みのせいで眠りそのものが崩れている場合は、ベッドの再訓練も一緒に組み立てます。体が椎間板ヘルニアを吸収していく間、夜がその時間を助けるようにすることが目標です。
三つ目、夜の記録で確認します。 夜に痛みで目が覚める回数、朝起き上がるのにかかる時間、脚の痛みのスコアを、決めた時点ごとに比べます。根拠のない治療はいたしません。
こう変わります
明け方に寝返りを打つとき、息を止めずに済む夜。アラームの音にうなることなく、横向きになってゆっくり座る朝。夜が、椎間板にとって再び回復の時間になること。
当院が目指しているのは、それです。
楽な姿勢と回復のペースは、椎間板ヘルニアの位置と程度、体型によって人それぞれ異なります。
今日のまとめ
椎間板ヘルニアがあるなら、かたさよりも楽な中程度のかたさの上で、枕で骨盤を支えて寝てください。 そして朝は、横向きになって座ってから立ち上がってください。
今夜試していただきたいことは二つです。
- 横向きに寝るときは膝の間に枕をひとつ、あお向けのときは膝の下に枕をひとつ。
- 明日の朝は、勢いよく起き上がる代わりに、横向きになって座ってから立ち上がってみてください。
1週間、夜に目が覚めた回数と、朝起き上がるのにかかった時間を書いてきていただければ、あとは一緒に見ていきます。平日は夜8時半まで、土日・祝日も診療しています。
飛び出した椎間板が自然に吸収される経過とその根拠は、院長コラム飛び出した椎間板は、自然に小さくなることもありますにまとめてあります。
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参考文献
- Kovacs FM, Abraira V, Peña A, et al. Effect of firmness of mattress on chronic non-specific low-back pain: randomised, double-blind, controlled, multicentre trial. Lancet. 2003;362(9396):1599-1604. PMID: 14630439
- Wilke HJ, Neef P, Caimi M, Hoogland T, Claes LE. New in vivo measurements of pressures in the intervertebral disc in daily life. Spine. 1999;24(8):755-762. PMID: 10222525
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