ホーム › 院長コラム › 腰椎椎間板ヘルニア · 脊柱管狭窄症
2026年8月9日

腰のコルセット、長く着けると筋肉が弱くなるのでしょうか

キム・ジフン
医療監修 キム・ジフン 代表院長

30秒でわかるポイント

  1. コルセットを長く着けると腰の筋肉が弱くなるという話は広く知られていますが、それを裏づける確かな根拠はまだありません。
  2. かといって、何年も着け続けて大丈夫だと言える根拠もありません。そこまで長く追跡した研究がないからです。
  3. 大事なのはコルセットを着けるかどうかではなく、着けながら歩いて体を動かしているかどうかです。
  4. 脊柱管狭窄症で歩くと脚がしびれる方には、コルセットが歩ける距離を延ばす助けになることがあります。
  5. 脚に力が入らない、歩ける距離が急に短くなった、転んでから腰が痛むという場合は、コルセットでしのがずに、まず確認を受けてください。

よく伺うお悩み

  • 「コルセットを着けると楽なんですが、ずっと着けていてもいいんでしょうか?」
  • 「外すと腰が心もとなくて不安なんです。」
  • 「コルセットを着けると筋肉が弱くなると聞いて、怖いです。」
  • 「ついつい着けてしまうので、このまま外せなくなるんじゃないかと。」

コルセットを2〜3か月以上着け続けていて、これからどうすればよいのかと思って来院される方が多くいらっしゃいます。

「コルセットを着けると腰の力が抜ける」という話を聞いて来院される方が多くいらっしゃいます。着けていると楽だけれど、ずっと着けていてよいのか、外すと腰が心もとなくて不安だとおっしゃいます。2〜3か月以上着け続けてから、これからどうすればよいのかと思って来られるケースがほとんどです。

この心配は、医療者の間でも長くありました。コルセットが筋肉の仕事を肩代わりするので筋肉が休むことになり、休めば弱くなる、という話です。聞いてみるともっともらしく思えます。そこで、この話が実際に確かめられたことがあるのかを調べてみました。

予想とは違う姿が見えてきました。

筋肉が弱くなるという根拠はありますか

ありません。

35件の研究をまとめて調べた結果、腰のコルセットが体幹の筋肉を弱くするという決定的な根拠は出てきませんでした。筋力に変化がなかったという研究もあれば、むしろ強くなったという研究もありました。

同じ研究チームが、この問いを直接確かめてもいます。腰の痛みが長く続く患者さん44人を2つのグループに分け、片方だけにコルセットを着けてもらいました。1日平均7時間、4週間着けてもらったあと、超音波でお腹と腰の深層の筋肉の厚さを測ったところ、変化はありませんでした。

「筋肉が弱くなるという話は間違いだ」というより、「その話を裏づける根拠がまだない」というほうが近いのです。反対に、何年も着け続けて大丈夫だと言える根拠もありません。そこまで長く追跡した研究がないからです。

では、なぜガイドラインではコルセットをすすめないのですか

世界保健機関(WHO)は2023年、腰の痛みが長く続く方に、コルセットを日常的に使わないよう示しました。これだけを見ると、コルセットは悪いもののように思えます。

ところが、その判断の根拠を開いてみると話は違います。「根拠の確実性:非常に低い」と書かれているのです。有害だとわかったという意味ではなく、判断するための資料がないという意味です。

対象も見る必要があります。このガイドラインは、原因がはっきり特定できない腰の痛みを扱っています。画像で脊柱管狭窄症が確認された方は、ここには当てはまりません。

逆の結果もあります。2022年に出た分析は、複数の試験でコルセットが役立っていたにもかかわらず、ガイドラインがすすめていない点を問題にしました。患者さん777人をまとめて見た結果、コルセットを着けた側のほうが、日常生活の不便さも痛みもより減っていました。

つまり今の状況は、コルセットが有害だということではなく、誰にどれだけ役立つのかがまだ整理されていない、ということです。

脊柱管狭窄症の場合はどうですか

歩いていると脚がしびれて休まなければならない方がいます。こうした方には、コルセットが歩ける距離を延ばすのに役立ったという試験結果があります。

50歳以上の脊柱管狭窄症の患者さん104人を対象に、2種類のコルセットを比べた試験です。注目すべきは、どちらが勝ったかではなく、両方のグループで歩ける距離が延びたという点です。

なぜ役立つのでしょうか。腰を後ろに反らすと神経の通り道が狭くなり、前にかがめると広くなります。脊柱管狭窄症の方が腰をかがめると楽になり、下り坂より上り坂のほうが楽なのはこのためです。コルセットが腰の反りを減らしてくれると、歩いている間に神経が圧迫されにくくなる可能性があります。

ただし、コルセットだけで脊柱管狭窄症を管理するという根拠はありません。44件の試験をまとめた研究で、歩ける距離をはっきり延ばしたのは、手技による治療と運動、教育を組み合わせた場合でした。

そこで、当院はこう考えています

コルセットそのものを問題にはしません。根拠からすると、コルセットを着けると筋肉が弱くなると断定することはできませんし、コルセットを着けてこそ歩ける方からコルセットを取り上げれば、歩かなくなってしまいます。年齢を重ねた方ほど、動かないことのほうが大きなリスクです。

本当の問題は、コルセットを着けるだけで動かないことです。 コルセットを着けながら歩いたり運動したりする方と、コルセットに頼って活動を減らす方とでは、結果が違います。脊柱管狭窄症で歩ける距離を延ばした根拠が、運動を組み合わせた場合から出てきたことも同じ話です。歩かなければ筋力が落ち、筋力が落ちればさらにコルセットに頼るようになります。年齢を重ねた方ほど、この悪循環は早く回ります。

ですから、なぜ着けているのかを伺います。痛むとき、長く立つとき、外出するときに使うのと、寝るときまで一日中着けているのとは違います。外すと不安で外せない状態なら、その不安そのものを扱う必要があります。

コルセットを何年も着けている場合を長く追跡した研究は、まだありません。そのため当院は、着けてもよい・いけないを一般論ではお伝えしません。今のその方に必要な状態なのかを測って決めます。歩ける距離が延びていれば順調で、そこからコルセットを減らしていく方法を一緒に決めていきます。

コルセットに隠れているサインがないかを見ます

これがいちばん大事です。コルセットを着けると我慢できるからと検査を先延ばしにしている間に、見逃すものが出てくることがあります。

脚のしびれがひどくなった、歩ける距離が目に見えて短くなった、力が入らない、排尿・排便のコントロールが変わった、転んでから痛み始めた、夜横になっても痛む――こうした場合はすぐに確認が必要です。特に骨の弱い高齢の方が転んだあとに始まった腰の痛みは、骨にひびが入っている可能性から見なければなりません。

当院ではこのように進めます

まず、コルセットをいつから、どのように使っているかを伺います。1日何時間、どんな状況で着けているのか、外すとどんな感じがするのかまで確認します。

そして画像を見て判断します。体型検査で体の並びを測り、必要であれば同じビル2階の画像診断科と連携して、レントゲン・CT・MRIで背骨を確認します。脊柱管狭窄症なのか、骨にひびが入っているのか、年齢による変化なのかによって、コルセットの意味がまったく変わってくるからです。画像なしに、コルセットを着け続けるべきかどうかを判断することはしません。

その次が、コルセットなしでも支えられる力をつくる過程です。推拿(チュナ)治療でゆがんだ並びや固まった部分を扱い、鍼と薬鍼で痛みを抑えます。コルセットが代わりに担っていた支える力を、体が自分でつくれる方向へ導いていきます。2026年9月時点で推拿治療の累計14,286回、2026年8月時点で累計来院者数20,374人を見ながら、この方法を磨いてきました。

歩かないでくださいとは言いません。どれくらい、どのように歩くかを一緒に決めます。歩ける距離が延びれば、それ自体が治療です。危険なサインが見られれば治療より確認が先なので、すぐに検査をご案内し、必要であれば大きな病院へおつなぎします。

コルセットが必要かどうか、どれくらい良くなるかは、背骨の状態や骨の健康、筋力、ほかの病気によって人それぞれです。

当院が目標に置いていること

コルセットを取り上げることではありません。

コルセットを着けたままでも歩ける距離が延びていくこと。そして時間が経つにつれ、コルセットがあまり必要なくなっていくことです。体が自分で支える力を取り戻せば、自然とそうなっていきます。

買い物の行き帰りが楽になること、外出のたびにコルセットを持っていくか迷わなくなること。そのくらいの変化を一緒につくっていきます。

コルセットを2か月以上着けている、外すと不安でずっと着けてしまう、着けていても歩ける距離がどんどん短くなっている――そんな方は一度測りにいらしてください。すぐに外しなさいとは言いません。今必要な状態かどうかを測り、必要であれば使い続けていただきます。その代わり、いつ、どのように減らしていくかを一緒に決めます。

この記事が参考にした資料

資料 どんな研究か 結果
Azadinia ほか, 2017 35件の研究をまとめて分析 コルセットが体幹の筋肉を弱くするという決定的な根拠はなし
Azadinia ほか, 2019 腰痛の患者さん44人、1日7時間・4週間着用 お腹と腰の深層の筋肉の厚さに変化なし
Gignoux ほか, 2022 試験4件・777人をまとめて分析 コルセットを着けた側で日常生活の不便さと痛みがより減少
世界保健機関ガイドライン, 2023 長引く腰痛の診療ガイドライン 日常的な使用はすすめない。ただし根拠の確実性は「非常に低い」
Ammendolia ほか, 2019 50歳以上の脊柱管狭窄症104人 2種類のコルセットのどちらでも歩ける距離が延びた
Ammendolia ほか, 2022 試験44件をまとめて分析 歩ける距離をはっきり延ばしたのは、手技治療・運動・教育を組み合わせたアプローチ

参考文献

  1. Azadinia F, Ebrahimi Takamjani E, Kamyab M, Parnianpour M, Cholewicki J, Maroufi N. Can lumbosacral orthoses cause trunk muscle weakness? A systematic review of literature. The Spine Journal. 2017;17(4):589-602. doi:10.1016/j.spinee.2016.12.005. PMID: 27988341

  2. Azadinia F, Ebrahimi Takamjani I, Kamyab M, Kalbassi G, Sarrafzadeh J, Parnianpour M. The effect of lumbosacral orthosis on the thickness of deep trunk muscles using ultrasound imaging: a randomized controlled trial in patients with chronic low back pain. American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation. 2019;98(7):536-544. doi:10.1097/PHM.0000000000001135. PMID: 30652982

  3. Gignoux P, Lanhers C, Dutheil F, Boutevillain L, Pereira B, Coudeyre E. Non-rigid lumbar supports for the management of non-specific low back pain: A literature review and meta-analysis. Annals of Physical and Rehabilitation Medicine. 2022;65(1):101406. doi:10.1016/j.rehab.2020.05.010. PMID: 32561503

  4. World Health Organization. WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults in primary and community care settings. Geneva: World Health Organization; 2023. ISBN 978-92-4-008178-9. https://www.who.int/publications/i/item/9789240081789

  5. Ammendolia C, Rampersaud YR, Southerst D, Ahmed A, Schneider M, Hawker G, Bombardier C, Côté P. Effect of a prototype lumbar spinal stenosis belt versus a lumbar support on walking capacity in lumbar spinal stenosis: a randomized controlled trial. The Spine Journal. 2019;19(3):386-394. doi:10.1016/j.spinee.2018.07.012. PMID: 30053521

  6. Ammendolia C, Hofkirchner C, Plener J, Bussières A, Schneider MJ, Young JJ, Furlan AD, Stuber K, Ahmed A, Cancelliere C, Adeboyejo A, Ornelas J. Non-operative treatment for lumbar spinal stenosis with neurogenic claudication: an updated systematic review. BMJ Open. 2022;12(1):e057724. doi:10.1136/bmjopen-2021-057724. PMID: 35046008


コルセットを何年も着けているなら、一度測りにいらしてください。着けたままでも歩ける距離が延びているかどうかから見ていきます。

ご相談・ご予約はページ右下のメッセンジャーから日本語でどうぞ。お電話は +82-53-716-1175 です。

気になる症状はありませんか?

平日は夜8時半まで、土日・祝日も診療しています。

日本語でご相談いただけます

ページ右下のメッセンジャー(チャット)から日本語でどうぞ。スタッフが翻訳してお返事しますので、返信までお時間をいただく場合があります。

お電話:+82-53-716-1175(韓国国内からは 053-716-1175)

キム・ジフン

キム・ジフン 代表院長

検査では異常がないと言われたのに、不調が続いている方を診ています。お腹を押して診る腹診、舌を見る舌診、脈をとる脈診で体の状態を確かめ、確認したことを数字で記録して、次の診療のときに比べます。 痛みについては、痛む場所だけを見ることはしません。足の着地のしかたや顎のバランス、歩き方から原因を探します。治療の方針をご説明するときは、どの学術誌のどの研究なのかもあわせてお伝えします。ご自身で確かめられてこそ根拠だと考えています。

医師紹介をもっと見る →
/* v1.35.6 cache-bust 1775272025 */