眠れないときは、ベッドから出てください
目次
長く横になる努力が、なぜ逆効果になるのか
30秒でわかるポイント
- 脳は、場所と状態を組にして記憶します。ベッドで目が冴えたまま寝返りを打つ夜が繰り返されると、ベッドが「横になった瞬間に頭がさえる場所」として学習されます。
- だから治療は逆を行きます。長く横になるのではなく、ベッドと眠りのつながりを作り直すことです。
- 一つ目のルールは、ベッドでは眠るだけにすることです。横になって15〜20分たっても眠れなければ、ベッドから出ます。 眠気がまた来たら、そのときに戻ります。
- 二つ目のルールは、横になっている時間をむしろ減らすことです。薄く広がっていた眠りを、短く深くまとめる原理です。
- ただし、減らす幅はご自分だけで決めてはいけません。 日中の眠気が危険になることがあるため下限があり、1〜2週間の睡眠日誌を見て決めます。
よく伺うお悩み
- 「今日は早く寝ようと1時間早く横になったら、かえって眠れません。」
- 「横になって2〜3時間粘って、やっと眠れるんです。」
- 「よその家ではよく眠れるのに、自分のベッドでだけ眠れません。」
- 「よく眠ろうと努力するほど、眠りが遠ざかっていく気がします。」
長く横になることが、不眠を大きくしています
今日こそ早く寝よう。そう思って、いつもより1時間早く横になります。
ところが目はぱっちり冴えて、あっちへ寝返り、こっちへ寝返り。時計を見ると、もう1時間たっています。寝なきゃ、寝なきゃと思うほど、眠りはさらに遠ざかります。そうして2〜3時間粘ってやっと眠り、翌日また決心します。今日はもっと早く横になろう。
不眠に悩む方がいちばんよくする努力が、これです。もっと長く横になること。
そして不眠症の治療がまず最初に直す習慣も、まさにこれなのです。
ベッドが「眠れない場所」として学習されています
私たちの脳は、場所と状態を組にして記憶します。食卓につくと食欲がわき、机に向かうと仕事のことを思い出すように。
ところが、ベッドで寝返りを打つ夜が何か月も繰り返されると、脳はベッドをこう学習します。ここは、横になった瞬間に頭がさえる場所。
よその家やソファではかえってよく眠れるのに、自分のベッドでだけ眠れない、という方がいらっしゃいます。まさにこの学習が起きているサインです。
だから治療は逆を行きます。ベッドに長くいるのではなく、ベッドと眠りのつながりを作り直すことです。不眠症の認知行動療法(CBT-I)と呼ばれる治療の二本柱が、これからお話しするベッドの再トレーニングです。
柱その一——ベッドでは眠るだけにします
ルールは単純です。
眠いときだけベッドに横になります。ベッドでは、眠ること以外はしません。スマートフォン、テレビ、仕事の心配もすべて含みます。そして、横になって15〜20分たっても眠れなければ、ベッドから出ます。
リビングで退屈なことをしていて眠気がまた来たら、そのときにベッドに戻ります。何度でも繰り返します。
夜に何時に眠ったとしても、朝起きる時間は毎日同じに守ります。
要は、ベッドの中で起きたまま粘る時間をなくすことです。最初の数日は行ったり来たりでかえって疲れるかもしれません。その数日を過ごすうちに、脳はもう一度学びます。ベッドは、横になった瞬間に眠る場所だと。
柱その二——横になっている時間を、むしろ減らします
ここで役立つ数字が一つあります。実際に眠っていた時間を、ベッドに横になっていた時間で割った割合、わかりやすく言えば、横になっていた時間のうち本当に眠っていた時間の割合です。
8時間横になって5時間眠ったなら、この割合は60%台です。
この割合が85%に届かなければ、ベッドにいる時間そのものを、実際に眠っている時間に近づけるまで減らします。眠りを圧縮して密度を高める原理です。薄く広がっていた眠りが短く深い眠りにまとまったら、その次にベッドにいる時間を少しずつまた延ばしていきます。
この部分は、ご自分だけで決めてはいけません
減らす方法には、必ずついてくる条件があります。
一人で無理に減らすと、日中の眠気が危険になることがあります。そのため、ベッドにいる時間は一定の水準、おおよそ5時間台より下には減らさないことになっていて、減らす幅は1〜2週間の睡眠日誌をもとに決めます。
方向性は、ご家庭でも参考にしていただけます。ただ、幅とスピードは一緒に決めるべきことです。
当院の診療では、こう使います
まず、原因とパターンを探します。1〜2週間の睡眠日誌に、横になった時刻、眠った時刻、目が覚めた回数、起きた時刻を書いて、ご自分の眠りの実際の形を確かめます。これに加えて、血液検査・脳波検査・体成分検査(InBody検査)と腹診・脈診で、覚醒がオフにならない体の理由もあわせて診ます。いびきや睡眠時無呼吸が疑われる場合は、再トレーニングより先に、睡眠ポリグラフ検査ができる医療機関のご案内をします。
次に、覚醒をオフにしながら再トレーニングをします。鍼(はり)・薬鍼(やくしん)で日中にたまった緊張を扱い、検査結果に合わせた韓方薬で崩れたリズムを取り戻しながら、上のベッドの再トレーニングを、それぞれの生活に合った幅で一緒に設計します。体の覚醒をオフにする治療と、ベッドの学習を直すトレーニングが一緒に進んでこそ、どちらか一方だけのときより道のりが短くなります。当院が不眠をどんな順番で診るかは、診療のご案内にまとめてあります。
そして、数字で確かめます。治療前に記録した睡眠日誌の割合が上がっているかを、一緒に見ます。感覚ではなく、記録で。根拠のない治療はいたしません。
睡眠薬を飲んでいるなら
ご自分の判断でやめないでください。急にやめると、かえって不眠がひどくなることがあるため、調整は処方を受けた医療機関と相談して決めてください。
再トレーニングは、薬を飲んでいるあいだにも始められます。 減らしていくお話は、別にまとめてあります。
今夜から始められます
横になってすぐ眠れるベッド。今日は眠れるだろうかと計算せずに布団をかぶる夜。
当院が目標にしているのは、ベッドがもう一度、眠りの味方になることです。
再トレーニングのスピードと幅は、眠りの状態や生活の事情によって人それぞれです。ただ、今夜から始められることは同じです。眠れないときは、粘らずにベッドから出ること。
横になって20分たっても目が冴えているなら、今夜一度、逆をやってみてください。そして、そんな夜が何週間も続いているなら、日誌を持っていらしてください。幅とスピードを一緒に決めます。
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途中で目が覚める不眠が別にあるというお話は院長コラム途中で目が覚めるのも不眠症ですに、目が覚める時刻によって診るべきことが変わるお話は明け方3時に目が覚めるのと、5時に目が覚めるのは違いますにまとめてあります。
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