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2026年10月10日

膝の軟骨がすり減っていると言われましたが、歩いてもいいのでしょうか

キム・ジフン
医療監修 キム・ジフン 代表院長

軟骨はすり減ると言うのに、なぜすべての診療ガイドラインは運動を第一に挙げるのでしょうか

30秒でわかるポイント

  1. 変形性膝関節症で、主要な国際診療ガイドラインがそろって第一に推奨している治療は、注射でも手術でもなく運動です。
  2. 「大事に使って」という言葉には逆説があります。活動を減らすと、膝のクッションである太ももの筋肉が弱くなり、同じ歩みでも関節が受ける衝撃がかえって大きくなります。
  3. 臨床試験44本(3,537人)を集めた分析で、運動は痛みを100点中平均12点減らし、その効果は終了後も2〜6か月以上続きました。 ウォーキングでも筋力トレーニングでも、種類による違いははっきりしませんでした。
  4. 鍼治療は1万7千人あまりのデータで効果が確認されましたが、効果がないという結果が出た大規模な試験もあります。 当院は両方をお伝えし、運動ができる膝をつくる役割として使います。
  5. 膝が腫れて熱を持っている、夜に休んでいても痛む、急に引っかかって動かなくなる、けがの後に始まったという場合は、変形性ではない可能性があるため、まずそれを確認します。

よく伺うお悩み

  • 「軟骨がすり減っていると言われたんですが、歩いても大丈夫ですか?」
  • 「階段はまったく使わなくなり、登山もやめました。」
  • 「大事に使えば長持ちすると言われたので、なるべく動かないようにしています。」
  • 「注射を打ったときだけ一時的に良くて、また痛くなります。」

関節症と診断された方の多くは、すでに答えを決めて過ごしています。大事にしなければいけない、という答えです。軟骨は消耗品で、使えばすり減る、という理屈です。

直感的には正しく見えますが、実際の診療ガイドラインとは隔たりがあります。米国リウマチ学会、国際変形性関節症学会(OARSI)、英国NICEをはじめとする主要なガイドラインが、膝関節症の第一の管理として挙げているのは運動です。すり減る関節になぜ運動なのか、その根拠を見ていきましょう。

関節症は、軟骨だけの病気ではありません

変形性関節症を「軟骨がすり減る病気」としてだけ見ると、大事にすることが答えのように見えます。しかしこの病気は、軟骨とその下の骨、関節を包む膜、そして関節を守る筋肉までを含んだ、関節全体の病気です。

ここで筋肉の役割が決定的になります。太ももの筋肉は、歩くたびに膝にかかる衝撃を分担して受け止めるクッションです。大事にしようと活動を減らすとこのクッションが弱くなり、弱くなった分だけ、同じ歩みでも関節が受ける負荷が大きくなります。

大事にしようとした行動が、かえって関節を叩くことになるのです。 狭窄症編で見た「痛いから歩かなくなり、歩かなくなるからもっと歩けなくなる」という悪循環が、膝でもまったく同じように起こります。

アライメントと体重が欠かせない理由

膝の内側にかかる負荷は、アライメント(脚の並び)と体重のかけ算で決まります。

脚が内側に曲がったアライメント、つまりO脚が膝の内側の関節症の発生と進行に関係していることは、O脚編で確認しました。体重は、その負荷にかけ合わされる値です。関節症の管理で、アライメントの評価と体重を一緒に見なければならない理由です。

運動の根拠は、大きさまで正直に見る必要があります

運動は、膝関節症で最も多く検証されてきた治療です。

臨床試験44本、3,537人を集めたコクランレビューでは、ウォーキングや筋力トレーニングのような陸上での運動が、治療直後の痛みを100点尺度で平均12点減らしました。質の高い根拠と評価され、身体機能と生活の質も改善しました。効果はプログラム終了後も2〜6か月以上続きました。2024年に試験139本に広げて改めて分析したときも、痛み・機能・生活の質の改善が再確認されています。

診療で大切なポイントが二つあります。

第一に、運動の種類による違いははっきりしませんでした。 太ももの筋力トレーニング、脚全体の強化、ウォーキング、複数の運動を組み合わせたプログラムの効果は同程度でした。完璧な運動を探して始めるのを先延ばしにする理由はありません。続けられる運動が、良い運動です。

第二に、効果の大きさは誇張せずに読む必要があります。 2024年のレビューは、改善幅を、患者が意味のある変化と感じる最小の変化(12点)と比べて、小〜中程度の大きさと評価しました。運動は万能ではありません。深刻な副作用を増やさずに、着実に積み重なっていく基本です。

鍼治療の成績は、食い違っています

膝関節症に対する鍼治療の根拠は、このコラムシリーズで扱ったどのテーマよりも結果が食い違っています。

一方には、大規模な統合データがあります。 厳しい基準を通過した臨床試験29本、17,922人の患者の個別データを集めた分析で、鍼治療は関節症を含む慢性の痛みにおいて、偽の鍼よりも、治療しなかった場合よりも、痛みを多く減らしました。39本に広げたアップデートでは、効果が治療終了後もかなりの期間続いていました。偽の鍼と差が出たということは、効果が期待感だけでは説明できないという意味です。

もう一方には、反対の結果が出た大規模な試験があります。 50歳以上の慢性的な膝の痛みのある患者を、鍼、レーザー鍼、偽のレーザー鍼、無治療に分けたオーストラリアの試験では、12週後、鍼は偽の治療より痛みと機能を改善しませんでした(JAMA, 2014)。

二つの結果を並べると、こういう図になります。治療しなかった場合と比べた鍼の利益は比較的一貫して見られますが、偽の鍼と比べた鍼だけの効果は小さいか、研究によっては確認されていません。

ですから、鍼の正直な位置づけは、「関節症を治す治療」ではなく、痛みを下げて運動ができる膝をつくる役割です。

これらの根拠の限界

運動の試験は盲検化ができません。 患者が自分が運動しているかどうかを知らないということはありえないため、期待による効果が結果に混ざります。コクランレビューはそれを考慮したうえでも根拠の質を高く評価しましたが、効果の大きさの一部は、運動そのものではない要因かもしれません。

平均12点は集団の平均です。 より良くなる人と、反応がない人が混ざっています。一人ひとりの反応は、やってみなければわかりません。

鍼の研究は条件がまちまちです。 刺激の方法、回数、期間が研究ごとに異なり、どの条件が結果の違いを生んでいるのかは確定していません。オーストラリアの試験(12週で8〜12回)と統合データに含まれた試験の設計の違いも、解釈に影響します。

軟骨の構造が変わるという根拠ではありません。 運動も鍼も、症状と機能についての根拠であって、軟骨の経過を変えるという根拠ではありません。この区別をあいまいにすると、誇張になります。

そこで当院は、次の基準で診ます

第一に、変形性で間違いないかを見極めます。膝が腫れて熱感がある場合、休んでいても夜に痛む場合、急に膝が引っかかって動かなくなったりガクッと折れたりする場合、けがの後に始まった場合は、炎症性の関節炎や半月板損傷といった別の問題をまず除外する必要があります。年齢的に当然変形性だろうと見過ごしてしまうのが、最もよくある落とし穴です。

第二に、「大事にしてください」を処方から外します。代わりに負荷を設計します。痛みを大きく悪化させない範囲の活動は、減らすべきものではなく、守るべき治療です。分けて歩く、まず平地から、支えを活用するなど、膝が受け止められる形に活動を組み直します。

第三に、運動は禁止ではなく指示として処方します。人は「しないでください」をなかなか実行できません。「階段に気をつけてください」よりも、「下りるときは手すりを持って一段ずつ、そして平地を1日20分歩いてください」のほうが実行されます。何を避けるかではなく何をするかを、方法と回数まで決めてお伝えし、再診で確認します。

第四に、アライメントと体重を一緒に扱います。O脚を伴っていないかを見て、体重が関わっている場合は減量を治療目標に加えます。

第五に、鍼への期待は、成績のとおりにお伝えします。痛みを調整して運動を可能にする役割であり、相反する研究結果があることまでご説明します。

当院ではこのように進めます

まず見極めを行います。 初診で腫れ、熱感、夜間の痛み、引っかかり、けがの有無を確認し、必要に応じて同じビル2階の画像診断科と連携し、X線・MRIで関節の状態を確認します。炎症性の疾患が疑われる場合は、該当する診療科をまずご案内します。

負荷の二つの変数を測ります。 X-body体型検査で脚のアライメントとO脚の有無を、InBody検査で体重と筋肉量を見て、この膝にどのように負荷がかかっているかを把握します。

運動ができる膝をつくります。 鍼・薬鍼で痛みと腫れた周囲を調整し、推拿(チュナ)治療で股関節・膝・足首のアライメントと動きを整えます。

運動を「このようにしてください」と処方します。 太もも・お尻の強化とウォーキングを、痛みのレベルに合わせて方法、回数、強度まで決めてお伝えし、再診時に実行できているかを見て調整します。体重が関わっている場合は、減量の目標も一緒に決めます。

痛みと歩行で見直します。 痛みのスコア、休まずに歩ける時間、階段の上り下りの程度を記録し、決めた時点ごとに比べます。経過が良くなければ同じ治療は繰り返さず、見極めの段階に戻ります。手術の評価が必要な状態であれば、そちらをまずご案内します。

経過は、関節の状態、アライメントと体重、筋力、活動の状況によって人それぞれ異なります。

こう変わります

階段の前で、まずエレベーターを探さなくなること。「今日は少し歩いてみようか」が怖いことではなくなること。

そして、休まずに歩けた時間が、最初に測った日より延びたことを数字で確認していただくこと。当院が目指しているのは、そんな状態です。

この記事で参考にした資料

資料 どのような研究か 結果
Fransen ほか, 2015 コクランレビュー、臨床試験44本・3,537人 陸上での運動が痛みを100点中12点改善(質の高い根拠)、機能・生活の質も改善、終了後2〜6か月持続、運動の種類による効果は同程度
Lawford ほか, 2024 コクランレビューのアップデート、臨床試験139本 痛み・機能・生活の質の改善を再確認。効果の大きさは意味のある最小変化と比べて小〜中程度
Vickers ほか, 2018 患者個別データの統合分析、臨床試験39本(初版29本・17,922人) 関節症を含む慢性の痛みで、鍼が偽の鍼・無治療より痛みを改善、効果が持続
Hinman ほか, 2014 ランダム化臨床試験(JAMA)、50歳以上の慢性的な膝の痛み 12週の鍼・レーザー鍼のいずれも、偽の治療と比べて痛み・機能の利益なし

参考文献

  1. Fransen M, McConnell S, Harmer AR, Van der Esch M, Simic M, Bennell KL. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015;(1):CD004376. doi:10.1002/14651858.CD004376.pub3

  2. Lawford BJ, Hall M, Hinman RS, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2024;(12):CD004376. doi:10.1002/14651858.CD004376.pub4

  3. Vickers AJ, Vertosick EA, Lewith G, et al.; Acupuncture Trialists' Collaboration. Acupuncture for chronic pain: update of an individual patient data meta-analysis. The Journal of Pain. 2018;19(5):455-474. doi:10.1016/j.jpain.2017.11.005

  4. Hinman RS, McCrory P, Pirotta M, et al. Acupuncture for chronic knee pain: a randomized clinical trial. JAMA. 2014;312(13):1313-1322. doi:10.1001/jama.2014.12660. PMID: 25268438


軟骨がすり減っていると言われて、まず歩くことから減らしてしまった方は、一度お越しください。膝が受け止められる量を測り、今日から取り組むことを決めます。膝をどのような順番で診ているかは、診療案内にまとめてあります。

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キム・ジフン

キム・ジフン 代表院長

検査では異常がないと言われたのに、不調が続いている方を診ています。お腹を押して診る腹診、舌を見る舌診、脈をとる脈診で体の状態を確かめ、確認したことを数字で記録して、次の診療のときに比べます。 痛みについては、痛む場所だけを見ることはしません。足の着地のしかたや顎のバランス、歩き方から原因を探します。治療の方針をご説明するときは、どの学術誌のどの研究なのかもあわせてお伝えします。ご自身で確かめられてこそ根拠だと考えています。

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